153 : ガウス整数の調べ上げ

方程式x2=1x^2 = -1が実数xxについて解が存在しないことは誰もが知っている. しかし, 虚数iiを導入することで方程式は2つの解x=i,x=ix = i , x = -iを持つ. さらに, 方程式(x3)2=4(x - 3)^2 = -4は二つの複素数の解x=3+2i,x=32ix = 3+2i , x = 3-2iを持つ. x=3+2ix = 3+2ix=32ix = 3-2iは他方の共役複素数と呼ばれる. a+bia + biという形の数は複素数と呼ばれる. 一般に,a+bia + biabia - biは他方の共役複素数である.

ガウス整数とはaabbがともに整数である複素数a+bia + biのことである. 普通の整数はまた, ガウス整数である. (b=0b = 0のケース) b0b ≠ 0のガウス整数と区別するために, 普通の整数を"有理整数"と呼ぶことにする. 有理整数nnをあるガウス整数で割った結果がガウス整数である場合, そのガウス整数は約数と呼ばれる. 例として,551+2i1+2iで割ると,51+2i\displaystyle \frac{5}{1+2i}は以下のように簡略化できる. 分子と分母に1+2i1+2iの共役複素数12i1-2iを掛ける. 結果は,51+2i=51+2i12i12i=5(12i)1(2i)2=5(12i)1(4)=5(12i)5=12i\displaystyle \frac{5}{1+2i} = \frac{5}{1+2i}\cdot\frac{1-2i}{1-2i} = \frac{5(1-2i)}{1-(2i)^2} = \frac{5(1-2i)}{1-(-4)} = \frac{5(1-2i)}{5} = 1-2iとなる. よって, 1+2i1+2i55の約数である. 1+i1+i51+i=5252i\displaystyle \frac{5}{1+i} = \frac{5}{2} - \frac{5}{2}iなので 5 の約数でないことに注意. さらに, ガウス整数(a+bi)(a+bi)が有理整数nnの約数ならば, その共役複素数(abi)(a-bi)もまたnnの約数となることにも注意.

実際,55は実部が正となる約数を,{1,1+2i,12i,2+i,2i,5}\{1, 1 + 2i, 1 - 2i, 2 + i, 2 - i, 5\}の6個持つ. 以下に最初の5個の正の有理整数の約数の表を示す.

n

実部が正のガウス整数の約数

約数の和s(n)s(n)

1

11

1

2

1,1+i,1i,21, 1+i, 1-i, 2

5

3

1,31, 3

4

4

1,1+i,1i,2,2+2i,22i,41, 1+i, 1-i, 2, 2+2i, 2-2i,4

13

5

1,1+2i,12i,2+i,2i,51, 1+2i, 1-2i, 2+i, 2-i, 5

12

正の実部を持つ約数について,n=15s(n)=35\displaystyle \sum_{n=1}^5 s(n) = 35を得る.

1n1051 ≤ n ≤ 10^5について,n=1105s(n)=17924657155\displaystyle \sum_{n=1}^{10^5} s(n) = 17924657155となる.

1n1081 ≤ n ≤ 10^8について,n=1108s(n)\displaystyle \sum_{n=1}^{10^8} s(n)を求めよ.

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